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新規事業参入スキーム
CVC設立がブーム
企業は、企業価値向上を目的に、事業ポートフォリオの見直しが絶えず欠かせない。その戦略として、新規事業への進出や既存事業の撤退などの意思決定の必要性に迫られる。新規事業参入のスキームとしては、一般に自社開発、提携・ライセンス、M&A、Joint Venture、ファンド活用、Corporate Venture Capital(以下、CVC)設立などが挙げられる。
各スキームには固有のメリット・デメリットがあるが、ここ最近、CVCが改めてブームとなっているため、CVCに焦点を当てて、CVCのメリット・デメリット、設立動向を紹介し、CVC設立における課題に留意しておきたい。
CVC
まず、CVCとは、事業会社が社内グループに投資部門を設立し、社外のベンチャー企業と協業を図りながら新規事業に参入するスキームである。従来のような自前主義では、消費者ニーズが多様化・高度化する中で新しい事業を創造するリソースに限界があり、またライフサイクルが短期化している昨今では時間を買う意味でも、オープンイノベーションにより新規事業への参入の舵を切るため、CVC設立が改めて注目されている。
CVC設立のメリット
ベンチャー企業との協業により開発を促進する事で事業シナジーによる戦略的リターンの獲得が可能であり、自社開発やM&Aに比べて、リスクやコストの低減化が図れる。またExit(投資の出口)としてM&A(トレードセール)やIPOによりファイナンシャルリターンを享受する事も可能である。なお、日本では米国のようにM&AによるExitの割合が増加傾向となっている。
CVC設立のデメリット
投資先の目利きが出来る人材難が挙げられ、適正な投資条件で戦略的リターンを実現する運営に課題がある。また、優良な投資先の発掘が難しく、中々発掘出来ない、または発掘出来たとしても他社との競争によりベンチャー企業から選定されないといった課題がある。なお最近のAI(Artificial Intelligence)、ビッグデータ、IoT(Internet of Things)、RPA(Robotics Process Automation)、などのIT関連では、日本では優良な投資先が少なく、またそのようなベンチャー企業の目利きが出来る人材も少ないのが現状である。
CVC設立の主要な企業としては、IT・通信・金融業種から、近年では、他の事業会社にも広がってきており、JR東日本、パナソニック、三井化学、日本郵政など業種も多彩になっている。実際、どのような企業がCVCを設立運営し、また、ベンチャー企業から選定されているかという観点から、下記が参考となる。
CVC設立企業
2018年3月8日、イノベーションリーダーズサミット(ILS)実行委員会と経済産業省は、有望ベンチャー企業が選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング2018 TOP100」の結果を発表した。当該調査結果によると、1位KDDI、2位トヨタ自動車、3位ソフトバンクとなった。ベンチャー企業によると、協業する大手企業を選ぶ理由は、「協業ニーズが明確で情報を積極的に公開」、「役員などトップ層と商談できる」、「ベンチャー提携の実績が豊富」、「業界ナンバーワン」、「CVCやアクセラレータプログラムを実施」の順番となっている。
https://ils.tokyo/asset/images/pdf/20180308-100.pdf
2019年6月20日、イノベーションリーダーズサミット(ILS)実行委員会と経済産業省は、2019年版を公表し、KDDI、ソフトバンク、トヨタ自動車がトップ3を維持となっている。